#MeToo後のカンヌ広告祭。適切なジェンダー表現の向こう側に…
6月18日から開催された、2018年のカンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル(カンヌ広告祭)では、「#MeToo」運動の流れを経て、広告におけるジェンダー表現について多くの意見交換や議論が交わされました。アメリカの食品メーカーMarsのマーケティング責任者のAndrew Clarke氏は、「#MeTooの火の中に良いガソリンを吹き込むような業界全体の流れとなっており、問題そのものの捉え方を多様化し、さらに多くの人を巻き込む機会となった」と、評価しています。
直接的に語り掛けるCM
化粧品ブランドSK-IIの広告映像では、「ステレオタイプの女性像からフリーになろう」という強いメッセージが感じられます。映像の舞台となっているのは、上海・ソウル・東京で、それぞれの都市に住む、30歳前後の3人の女性たちにフォーカスを当てています。2017年のジェンダー格差の国別ランキングを見ると、20位までにヨーロッパの主要国がランクインしている中、中国が100位、日本が114位、韓国が118位と、この3国は非常に低い順位となっています。アジアの3国に焦点を当てているのには、こういった背景もあるのかもしれません。映像の中では、女性は誰もが産まれた時から腕に「消費期限」の刻印が押されているという設定になっています。3人の女性が、子供どもから大人へと成長していく過程で感じる小さな違和感や、成長後は、それぞれに充実した日々を送りつつも、結婚へのプレッシャーを感じている様子が描かれており、多くの女性の共感を呼びます。SK-IIのキャッチコピーは、「運命を、変えよう。#changedestiny」であり、映像の最後では、それが見事に表現されていました。
ステレオタイプのジェンダー表現をやめたら
ステレオタイプのジェンダー表現とは、水着を着たスレンダーな女性、露出の多い服装のアイドル系の女性などを指し、テレビCMではまだ頻繁に見られるのではないでしょうか。SK-IIを販売する親会社P&Gのブランド責任者Marc Pritchard氏は、4万の映像広告の中の2割が、このような表現を続けていることを指摘し、そのような表現をすることは、購買には繋がらないと語りました。「ビジネスにおけるジェンダー平等のための例をあげましょう。現状では、同じ仕事をこなす男女の賃金格差は平均で約20%です。その差を埋めると、マッキンゼー(アメリカのコンサル会社)は、世界経済に28億ドル加算されると見積もっており、購買により経済が成長することを意味します」「ジェンダーが適切に描かれている広告は、信用格付けが10%上昇し、売上高が26%増加します」つまり、ステレオタイプのジェンダー表現をやめれば、売り上げや信用が上がるため、女性社員への適切な賃金の支払いが十分可能になり、購買が増えるため、世界経済も成長するということなのでしょう。